レギュの息が臭い…。
昼に食べたラーメンに、大量に入れたにんにくが、レギュを通して香ってくる。
今、我々はにんにくダイバーズになっている。
緊急スイミングアセントしてもにんにく。
オクトパス浮上をしてもにんにく。
曳航してもにんにく。
にんにくの香りの中、ハードな講習は続く。
息が上がれば、にんにくも上がる。
にんにく。にんにく。にんにく!にんにく!
そしてそれは徐々にやってきた。
ダイバーの厄介者、「波酔い」。
自分の顔から、表情が消えていくのが分かる。
さすが泉さん、自分が自分の酔いに気付いた同じ瞬間、泉さんも私の徴候に気付く。
「ねーさん、大丈夫?」
「…ぎぼぢわるいかも…」
ふらふらになりながらも、止めるとは言えない。
うまく言えないんだけど、変わる自分に、変わるダーリンまぐに、
目が離せなくなってしまっていたんだ。
もっとこの先の自分達を見てみたい…
そんな思いがあれば、波酔いだってへっちゃらさー!(空元気)
〈しばらくお待ちください〉
…さて、波酔いの大波も何とかやり過ごした。
水面での講習が続いていたため、水中に潜る。
次にやるのが、バティブリージング。
これは何かというと、1つのレギュを、2人で分け合い、10メートル水深から水面へ浮上をするという、バディのダーリンまぐと私との、愛と信頼とスキルが試される項目である。
正直、相手方は泉さんの方が…と、イケナイ気持ちが心をよぎる。
※↑まぐろもそう思ってました(^ ^; お互い様です
いやいやいやいや、ダーリンまぐは、立派なダイバー。
私なんかより、ずっとずっと立派なダイバー。
※↑ っつーか、お前、俺より経験本数多いやろ!
とっても優しい、素敵なダーリン…
(↑自分に言いきかせている)
さて、1つのレギュを吸うということは、体勢は当然、超密着になる。
マスク越しに、アイコンタクト。
夫婦でも、こんな密着して見詰め合うことはそうは無い。
今から私たちは、命を分け合う二人になるのよ…
さあ、レッツビギン!
ふっふ〜すーふー(渡す)
ふっふ〜すーふー(渡す)
ふっふ〜すーふー(渡す)
ふっふ〜すーふー(渡す)(以下同)
一度レギュをくわえたら、たとえダーリンまぐのためにでもレギュを渡せなくなるのではないか…
そんな自己中な私の態度に、彼の愛が一気に醒めるのでは…
やる前はそんな妄想もあったが、いざ、始めてしまうと、1つの作業に集中する訓練生としての自分が目覚める。息のリズムを崩さぬよう、集中していく。
心はとっても静かだった。
そして、静かな息と心のまま、ちゃぷっと水面に頭が触れた。
やった!成功だ!!!
泉さんが、体全体を使って、成功を喜んでくれる。
「ねーさん、すごいよ、昨日までレギュ外せなかったのに、できたじゃん、すごいよ〜
まぐろちゃんも、すごいよ〜 全然できてたじゃん〜すごいすごい!!!」
こんな手放しでほめられることって、大人になってそうあるもんじゃない。
やった!
思わず水面でガッツポーズ。
こんな青春的な行動も、ダイバーならではの、喜びだね★
波はさっきよりも高くなってきた。
でも、そんなことも全く気にならなくなった。
これにて、怒涛の2日目は無事、終了!!
私の、ダイビング史上一番の大変な日が終わる。
伊豆海人すーぱーレスキュー講習(3日目)
9月13日(最終日)
怒涛のスーパーレスキュー講習も、残すところあと、1日。
昨日で一皮剥けた気分の自分。心なしかお肌もつるんと角質が剥けた気分。
さて。今日の講習項目を確認。
今日の難関は、@水面人工呼吸、A水中で器材脱着、そのまま緊急スイミングアセント、水面から今度は素潜りで器材に到着、今度は器材を装着、水中に上がるというもの。
今回の講習を受けていなければ、まさに変態プレイのレベルの項目。
でも、これはこれまで1つずつ重ねてきた講習の組み合わせに過ぎない。
1つ1つクリアーしてきたことを、ちゃんとやればきっとできる…
そう心では思った。思ったのだが、1つ大きな問題があった…
私は来年、四捨五入すれば40代。健康診断の項目も、中高年ワールドに入る。
ありていに言えば…ぼちぼち蓄積してきた疲労が体を蝕み始めてきたのだ。
ダーリンまぐのぎっくり脇も、痛みが取れないまま…。
そう。まさに今の私たちは満身創痍の勇者。
RPG(ドラクエ)だったら即刻村に帰らなければ
いけない状況だ。
だけどルーラも使えぬハードなダンジョンをクリアするしかない勇者達なのだ。
※↑ ドラクエのばっくみゅーじっくを頭の中に流しながらお読みください♪
しかし、ダーリンまぐは今朝、とっても大ご機嫌だった。
なぜなら、大好きなかりんちゃんに、初めてまともに相手にしてもらえ、なんとおままごとのお相手にしていただけたのだ。
※↑ いや〜嬉しかったですワ。やっぱ、若いねーちゃんはいいね♪
その喜びでぎっくり脇の痛みを堪え、さあ、最終日の講習だ!!!
海は相変わらず灰色で、ざばざばしている。ある意味、レスキュー気分がとても盛り上がる海況だ。
まずは水面で、意識不明者への対応を行う。
これはレスキュー講習の花形。
要は水面で人工呼吸を行いながら曳航しながら人口呼吸を行いながら器材を取りながら人工呼吸を行いながら曳航しながら人工呼吸を行いながら…
まとめますと。
5秒に1回人口呼吸を行いながら、合間の数秒で器材を取り、その間曳航を続けるという、まさに体力・泳力・タイミング・技術の総合力が試されるレスキューだ。
まず、私とまぐが溺者になって、泉さんに見本を示してもらう。
(ちなみに人口呼吸はまねっこです。念のため)
…さすがプロのレスキューは安定感がある。
ふわっと大きなものに抱かれているみたい…
このままずっと溺者でいたい…泉さん、私を陸まで連れてって…♪
という気分になる。
いざ、ダーリンまぐによるレスキューが始まる。
途端に、首の支えがぐらぐらし、顔の上に水がざばざばかかる。
「さあ1!2!3!4!5!ほらほら息吹いて、流されてるよ、まぐろちゃん!顔の上に水かけない!ほら1!2!3!4!…」
ダーリンまぐの息がひいひい言い出して
溺者寸前。要レスキュー(^ ^;
※↑ いやいやいや、結構ツライっすよ、マジで。
そして私も顔の上に水がざばざば通りだし、時には水中に沈められ鼻から水が入り
がぼがぼ、げほげほ、溺者寸前。
即刻要レスキュー!!
何も事情を知らぬ人が見たら、ダーリンまぐが飽きた女房を溺れさせようとしているみたいに見えるのかもしれない。
要レスキュー者どうしが、ひいひい言いながら、何とかかんとか、終了…
結論。「人一人を助けるということは、並大抵のことではない!」
※ ↑ですからね、「海猿=カイジョーホアンチョーの人たち」って、凄いのよ。ついでに、らいふせーばーも凄い人たちなのよ。つまり、自然っつーのには、おそるべき存在なのよ。だから、自然に対しては謙虚にならなければならないと思うわけよ。
・・・以上、おやぢの独り言でした♪
海という自然の中で、人を助けるということの大きさ、尊さ、とんでもなさが、実感として感じられた。
正直、自分はいざという時、誰かを「助ける」ということはできないと思う。
それだけ、助ける=レスキューというのは、技量やリスクをどうしたって必要とするものなんだ。
それは、ある意味その人の人生に責任を持つくらいの意味を持つものなんだなあと、ふがいない自分の姿から学びました………あー、疲れたー………
伊豆海人すーぱーレスキュー講習(2日目:後半)